つれづれ今日の一曲琉球箏曲

今日の一曲『かりゆし「心残り」』

「今日の一曲」では、私がこれまで弾いてきたものの中から〝私はこれが好き〟〝この曲は弾いていて楽しかった〟等々の思い出がある曲を順にピックアップしてご紹介していきます。何か少しでも曲選びの参考にしていただければ幸いです。

『心残り』(組曲「かりゆし」より)

今日ご紹介する『心残り』は、我が琉球箏曲の師匠=長島清子先生が作られた「組曲 かりゆし」の中の一曲です。

この度、先生より許可をいただき、この曲を使って動画を製作・公開させていただきました。どんな曲か、まずはこちらをお聞きください。

本来は箏で弾き歌いする曲なのですが、私の声で歌うのはあまりに僭越なので、お箏だけ演奏を録音し、メロディはPCで打ち込みして作りました。本当は先生に歌っていただきたかった!

創作舞踊として

組曲「かりゆし」の初演は2000年。沖縄の琉球新報ホールにて開催された「長島清子研究所開設35周年記念公演」の演目として作られました。

次いで、2008年には作舞の野原先生の沖縄公演にて上演。この時、私は初めてこの作品を拝見し、琉球箏でこのような世界観を作り上げる先生方に大いに感銘を受けたものです。

そして3度目の2013年。横浜能楽堂で開催された「琉球箏曲にのせて 舞」の舞台で、私も先生方と一緒に演奏させていただくことができました。まさに〝夢のごと〟でした。

この時のことは『思い出』として既に記事に書かせていただいています。当時の公演の映像がアップされているYoutube動画もご紹介していますので、良かったらそちらもご覧ください。

組曲で描く情景

動画公開にあたり、先生のお宅に伺って許可をいただきつつ、この曲にまつわる様々なお話を聞かせていただきました。

先生によれば、組曲「かりゆし」は沖縄の風習 “清明祭” から構想を得て作られたのだそうです。神に祈りをささげ、ご先祖に思いを馳せながら、その日1日を一同で楽しく過ごす。その情景を5景(5曲)の曲に乗せて描かれたとのこと。

そして『心残り』は、楽しく過ごした一日の余韻に浸りつつ、夜が更けて美しく照り輝いている月に思いを残して歌う、組曲最後の締めくくりの歌になります。

惜しむ夜や更けて 戻る道しがら
 照り美らさ月に 想いのこち

夢のごと今日や 面影もまさて
 いちゃてぃ又遊ば 想いこめて

月を見るたびに

この曲は私にとってたくさんの思い出が詰まった大切な曲の一つです。楽しかったことばかりではなく、悲しかったこと、大変だったこともありました。いろいろな想いを経てきたからこそ、この曲が心に染みるのかもしれません。

綺麗な月を見上げるたびに「いちゃてぃ又遊ば」の言葉が思い浮かびます。折しも明日は満月。想いをこめて、お箏を弾いてみましょうか。

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